『もし日本が東側になったら』という仮想戦記映画
1番最初に驚いたのは、主人公のジョシュアが特殊部隊と一緒に秘密兵器を破壊しに行くヘリコプターの中のブリーフィングシーン。
アリソン・ジャネイ演じる上官が「最寄りの基地まで640キロだ。捕まるな」と言いながら、CGで秘密基地のあるエリアを映し出すところ。
秘密基地は中国大陸の南部くらいを示している。つまり日本列島がすぐそばにあるわけで、米軍基地があるから近いはず。にもかかわらず640キロも離れていると説明するということは、日本は中国などの東側陣営に取り込まれたということがここで判明する。
米軍が中国大陸で軍事作戦を行う上で、日本が自陣営にいないといかに不利な状況になるかを示しているシーンだった。
そして到着すると、秘密基地の科学者までも問答無用で撃ち殺していくあたりがじつにリアル。まるで2026年のベネズエラへの攻撃のようだった。
冒頭でロサンゼルスで核が爆発し、それをAIによるものと断定してAIとの戦争を繰り広げるきっかけになる演説シーンが登場するけど、そのロサンゼルスのグラウンドゼロはどう考えても9.11のグラウンドゼロをオマージュしているとしか思えない。
つまり勘のいい人なら、この冒頭の演説シーンでAIが核爆発を起こしたという説明はでっち上げの嘘だと気づく仕掛けになっている(9.11をきっかけにイラク戦争になるが、大量破壊兵器の証拠はなかった)。
やられる前にやるんだという理屈でアメリカ軍がAI擁護派のニューアジアの軍事基地を攻撃していく様子は、いかにも現実世界で起こりそうな展開で、見ていて背筋が凍る思いだった。
渡辺謙のセリフで「ただ平穏に暮らしたいだけだ」とあるように、私たち現代日本人の多くがただ日々を平穏に暮らしたいと望んでいても、戦争に巻き込まれることがあるのだという教訓を見せつけられたようだった。
他にも過去の米軍の実際の軍事行動を揶揄していると思われるシーンがある。
中盤で巨大な戦車がニューアジアの基地へ突入していくあたりは、ベトナム戦争を思わせるものだった。
さらに自爆兵(AI)を突入させるあたりは、カミカゼ特攻を思わせられた。このシーンは結構重要だと思う。
基本的にこの「ザ・クリエイター」で描かれる米軍はAIを撲滅するために戦争をしているのに、このシーンだけはAIのロボットに自爆行為をさせて敵に突入させている。
この映画で描写される米軍の戦闘行為が実際の史実を基にしているとすれば、この自爆ロボットは日本人を描写していると考えられる。
第二次世界大戦のときも、アメリカに住んでいた日本人は強制収容所送りになっている(ちなみにドイツ人は強制収容所送りになっていない)。
この自爆ロボットのように、アメリカに飼い慣らされた日本人が味方の内部に深く潜り込み、内部から崩壊させるという描写は、とある政党を彷彿とさせる恐ろしい描写だった。
主人公のジョシュアが特殊部隊と一緒に秘密兵器があるという基地の上にある村を襲うところもベトナム戦争そのもので、かなり野蛮な描き方をされているのも興味深い。
兵器で民間人を脅すし、警察にだまし討ちでミサイルを撃つし、やりたい放題だった(この特殊部隊は当然ながら奇襲作戦で乗り込んできている)。
この「ザ・クリエイター」という映画で最も興味深いのは、日本がアメリカに敵対するニューアジア側だということ。
つまり日本は自由主義西側ではなく、東側に属しているのである。
そのため渡辺謙は、アメリカと戦う日本人として登場する(クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』っぽい)。
全体的に日本リスペクトがあちこちに散りばめられていて、例えば主人公のジョシュアが恋に落ちる相手もマヤという名前のアジア人(演じているのは香港系イギリス人だけど、役名的には日本人役という設定)。
AI擁護派のニューアジアのゲリラ組織を率いるのは渡辺謙だし、至る所に日本語が登場するし(日本の高速道路のゲートや渋谷や新宿っぽい街の様子も映像で登場する)。
秘密兵器のアルフィがテレビで視聴しているのも日本の昔のSF映画だし、最後のエンドクレジットもいちいちカタカナ表記が登場する(英語の横文字とカタカナの縦書きを交差させていてとても格好いい)。
これだけ日本リスペクトをしているのは、日本人への警告のようにも感じられた。
ドラえもんを作り、AIやロボットとの共生というテーマ性や平和を重んじる姿勢を、日本人はそうした気質として持っているにもかかわらず、このままだと東側諸国に取り込まれて、いずれはアメリカに見放され、利用され、戦わされるようになるぞ、というかなり突っ込んだ警告だった。
実際問題、日本はどんどん円安になり、NISA制度を利用して毎月積立で一般個人でさえ日本円を投資に回している(NISAで1番人気のオルカンは70%がアメリカの株。つまり日本人は自分たちのお金をつぎ込んでアメリカの会社を助けているのである)。
円安が進み物価高が進む日本はいまだにアメリカに依存していて、総理大臣は中国と対立することも辞さない態度を示し、それを国民は高い支持率で支持している状態。
もしもこれが何かの反動で逆に動いたら、一気に日本が中国を中心とする東側に取り込まれる可能性もあるかもしれない。
例えば台湾有事の際に米軍が本当に助けてくれるのか気がかりな人は多いし、実際に日本人の自衛官が足りない状況下で戦争が起こった時にどこまで戦えるのかは不透明。
それでなくても移民を大量に受け入れることで日本は内部から崩壊する危機も抱えている(在留している中国人の方がアメリカ人より多い)。
そして円安によってあちこちの土地が中国人の手に渡れば、近い将来(この「ザ・クリエイター」という映画では2065年)、日本は東側陣営に組み込まれるかもしれない。
そういう恐怖を描いている映画だった。
もっとも、この映画が公開された2023年の状況とはだいぶ違っていて、アメリカも今ではAIを積極的に研究していて(2023年〜2025年くらいに見られた排除の姿勢はなくなった)、AIの性能は格段に良くなっているので、現実世界の雰囲気とは乖離が激しい。
例えばこの「ザ・クリエイター」という映画ではドローン攻撃が登場しないのはリアルではないなと思った(ロシアのウクライナ侵攻では、ドローンが戦況の優勢を左右する重要な存在であることが証明された)。
この「ザ・クリエイター」の主人公のジョシュア(アメリカ軍人)が、日本人役名のメイ(AI設計者)と恋に落ちてアメリカと敵対し、AIを守るという設定はなかなか斬新だった。
これだけの規模の映画にしては比較的低予算だし、やはり脚本のテーマ性が映画のクオリティを上げているように思った。
アニメやマンガなどの文化や技術力があった頃の日本の良さを再確認し、日本人よクリエイターとして立ち上がれ、という熱いメッセージを感じる映画だった。
この映画を観ても危機感を抱かない日本人は、近い将来、この映画のように大国の思惑で戦争に巻き込まれる運命が待っている気がした。

