美女二人に振り回されながら、冴えない陰キャラが陽キャラ主人公に成り上がるサクセスストーリー
正直言って、観る人を選ぶ映画だと思います
例えばこれ、女性が観てもピンとこないと思うし、モテモテな男の人が観てもピンとこないと思います
でも、僕のような陰キャラ(どういう人物のことかは映画の冒頭を観ればわかる)の人間にとってはとても面白い映画
主人公が彼女が欲しい大学生という設定
この設定を忘れてしまうと、この映画が中身のない映画に思えてしまいます
日本のアニメ作品によくあるような「異世界転生もの」や「ハーレムもの」や古谷実作品に見られる「冴えない主人公がある日美女に出会って恋をする」系の物語なんですね
この「冴えない主人公がある日美女に出会って恋をする」系の物語は古くから日本の昔話でも使われている手法で、例えば『鶴の恩返し』なんかは代表的な作品です
他にも『飯食わぬ嫁』と言った民話は日本全国に伝わっている他、この類の物語は世界中に分布しています
なにが言いたいかというと、この映画は上記の古典的手法に基づいた異種間恋愛物語であって、アクションスリラーやバンパイアホラーを想像すると肩透かしを食らうということです(おそらくこの映画を低評価する人は、ホラー映画だと思って観た人が多いと思います。単純に恋愛映画、それもティーン向けの異種間恋愛映画として鑑賞しないと本来のこの映画の良さが理解できません)
このような誤解を招いてしまったのはタイトルが『ナイトティース』といういかにもホラーっぽい題名ですし、宣伝ポスターもホラー映画っぽく作ってあるせいでしょう
でもね
異種間恋愛物語としては悪くないですよ
特に僕のような陰キャラ(他人カップルを羨ましそうな目で見ながら勉強しておばあちゃんと一緒に実家に暮らしながら学校に通っていたようなタイプ)はこの映画を面白く鑑賞できるはずです
『コラテラル』という映画ではトム・クルーズさんがタクシーに乗り込んできましたが、この『ナイトティース』では美女二人が乗り込んできます
さあこの時点でこの映画を観ている鑑賞者はどっちの美女がタイプかを検討することになります(セリフでも結婚するならどっち?みたいな会話があります。ちなみにこのセリフがちゃんと伏線になっているのが芸が細かい)
演じているのはルーシー・フライさんとデビー・ライアンさん(ルーシー・フライさんのほうが年齢も一つ年上で身長も10センチくらい高いですが、映画ではあまりわからないように撮られています。二人ともアラサーには見えない。主人公である大学生役のホルヘ・レンデボルグ・Jr.さんとはたったの三歳違い。女性に憧れる大学生が年上の美女と夜中にドライブするっていう映画なんですね)
主人公の兄と美女たちのボスが揉めていることが途中でわかりますが、その頃にはすっかりロマンスが発展している主人公
主人公が次第に吸血鬼側(美女側)の味方になりつつ、兄は吸血鬼のボスと戦うというちょっとシュールな設定が笑えます(まあ自分の欲望に正直な主人公なんです、大多数の男の子はこうなるよねという説得力)
ギャング映画の要素を絡めつつギャグ要素もちゃんと入っておりまして、主人公が美女たちの正体に気がつくホテルのシーンではまさかの大人のプレイ中(台の上に乗った上半身裸の男が二人、首から血を吸ってもらうという高等プレイ)なんですが、相方が死んだことがわかった途端に生き残った方の男がめっちゃ怒るんです(そりゃそうだけど。ちなみにこのシーンは『ホステル』という作品のオマージュっぽい)
つまり死んだことに気がつくまではプレイで昇天していると思い込んでいたわけで、血を吸われるという行為そのものが快楽という扱いになっていて、この辺がノーマルな嗜好の鑑賞者(僕も含めて)にとってはめっちゃ笑えるシーンとなっております
だって上半身裸で台にベルトで固定されながらめっちゃ罵ってるんですよ
当然そんな強がっていられる状況じゃないのに(しかも首筋から血を流しながら)
しかもこの固定ベルト、ちゃんと乳首を避けて固定されてるんです(アダム・ランドール監督のこだわりを感じますね)
残っている男性も乳首をイタズラされながら首筋に噛みつかれて絶命するんですが、本来なら恐怖シーンのはずが、シチュエーションのせいで笑えてしまってまったく緊張感がありません(この時点でホラー要素をまったく考慮していないことがわかります)
五人のボスを二人の美女でやっつけていくんですが、最後のロッコというボスのときなんて、主人公と美女一人がいちゃつきながらもう一人が闘っているというシュールな感じがクセになりますね(あまり難しく考えながら鑑賞してはいけない映画です)
そして男が窓ガラスから飛び出して倒れたあたりで気がついたようにはだけた服を直しながら自分も戦いにいく美女がなんともカッコいいです(ロマンスとバイオレンスを平行線上に配置しているアダム・ランドール監督のメッセージ性を感じます。つまりセックスと暴力が同じ位置付けであるということ。この美女たちにとっては戦いと性=生が同じ位置にあるという表現)
ビクター役にアルフィー・アレンさんを起用するあたりがアダム・ランドール監督のこだわりを感じます(『ゲーム・オブ・スローンズ』で陰部を切り取られる役を熱演した俳優さんが美女を従えて顎で使い、夜の街を牛耳るという設定がすでに面白いです)
『彼岸島』に登場したような血液採取椅子に座らされた人間が何人もいる光景を映して、やっぱり吸血鬼映画だったんだねと思い出させてからの最終決戦です(これがないと鑑賞者がバンパイアものだって思い出せなくなっちゃうかもしれないから)
ヘタレな主人公が兄のため(本当は美女のためかな)に作戦を練ってボスを倒すんですが、詳しくは映画を観ればわかります(兄がラストでいい仕事をするんです)
ただの異種間恋愛ものではなく、そこにギャング映画の要素と『コラテラル』設定を混ぜつつティーン向けに作られた軽い気持ちでサクッと観れるロマンス映画です
なお、この映画の中で僕が演じたいと思った役は最後のマフィアのボスのロッコ役です
このロッコという人物、かなり癖が強くって吸血鬼なのにやたらと腰パンで服もはだけてて腹筋見せびらかしながらナヨナヨしてるんですよね(一見すると薬物中毒のストリッパーっぽい)
マッチョな男なのにナヨナヨしながら主人公のことをベタベタ触ったり、主人公が童貞だと言い当てたり(童貞には興味がないらしい)かと思えば真夜中に訪ねてきた美女たちに対して「俺を襲う気か?そんなに軽くないぞ」と言ったあとで美女と「二人きりにしてくれ」と頼んだり、まあ面白いキャラクターなんです(『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウ役のジョニー・デップさんっぽい)
「さっき殺したばかりの新鮮なO型だ」と言いながらカクテルグラスで血を飲む姿がカッコいいし、このロッコ役をぜひ演じてみたいですね(このロッコが美女の指を舐めるシーンがあるんですが、わざと糸が引くように撮影されてるんですよね。こういう細かい部分がアダム・ランドール監督のこだわりを感じます。普通に鑑賞してたら見落としてしまうような部分をこだわる。この唾の糸によって美女がすでにロッコに絡め取られている=罠にかかっていることがわかるシーンになっているんです)
ホラー映画と思わずに気軽に楽しめる異種間恋愛映画だと思って鑑賞してほしいです
そしてアダム・ランドール監督の細部のこだわりを見つける楽しみがまるで隠れミッキーマウスを探す感覚で楽しめればこの映画にハマること間違いないでしょう
その他の細かいこだわり
美女がホテルの駐車場で警官と話すシーンで「自分でビクターに電話しなよ」と警官に言い放つのですが、歯をガチガチと警官の顔前で鳴らしますが、これは『羊たちの沈黙』のレクター博士のオマージュかなと
他にも警官に対して男たちを殺したことについて嘘をつくシーンで「the best suck」をしただけと言うセリフがあるんですが、これもシャレになっていて吸血行為とオーラルセックスとをかけているんですね(日本語翻訳では直接的表現でフェ◯しただけと言ってますが英語ですと二重の意味がかけられていることがわかります。なお、美女はこのとき男たちのことをboyと表現しているんです。美女たちが200歳の吸血鬼という設定ですから成人男性であってもboyという表現になっているんです。翻訳では字数の関係から端折られてしまっているのでわかりづらいですが、原語バージョンでは一応バンパイア映画だということが伝わるようにセリフにも工夫がみられています)